半落ち ★★☆☆☆

監督:佐々部清  脚本:横山秀夫

出演:寺尾聰、原田美枝子、柴田恭平 他

タイトル: 半落ち


ストーリー

『私、梶聡一郎は、3日前、妻の啓子を自宅で首を絞めて殺しました』

現役警察幹部・梶聡一郎(寺尾聰)の自首から物語は始まる。

アルツハイマー病に苦しむ妻・啓子(原田美枝子)の


『自分が壊れてしまう前に、息子を覚えているうちに殺して』


という嘆願に応えたのだという。

(梶夫妻は、7年前に急性白血病で息子を亡くしていた)

しかし、そこにはひとつの謎が残った。


自主をするまでの空白の2日間に何があったのか…。

なぜ、梶は自殺という道を選ばなかったのか?


取調官の志木(柴田恭平)は空白の2日間に固執したが、

スキャンダルを恐れた県警幹部は調書を捏造し、 事件の幕引きを目論む。

しかし、「空白の2日間」についての県警の発表にウソがあることが、

『梶が東京行の新幹線ホームにいた』

という目撃情報のタレ込みで明らかになる。


事件の推移と共に、担当検事・佐瀬(伊原剛志)、弁護士・植村(國村隼)、

スクープを狙う新聞記者・中尾(鶴田真由)、裁く判事・藤林(吉岡秀隆)が、

各々の人生を背負い、思惑を抱え事件の真相を暴く為に、

梶の人生、梶という人間そのものに近付いていく。


梶が語ろうとしない事実とは何か。


人は、何を支えに、何を励みに生きるのか。

人が人として、輝いて生きるための〝よすが〟とは…。

命の意味を問うミステリー。


【公開時コピー】

男はなぜ、最愛の妻を殺したのか――
男はなぜ、あと1年だけ、生きる決心をしたのか――?




レビュー(ネタばれあり)

命の意味、嘱託殺人、アルツハイマー病、急性白血病の骨髄移植、

面子にこだわる警察の体質、マスコミの倫理観…。

テーマが多すぎる。しかも、どのテーマも重い。

全てをチョコチョコと絡ませて、2時間という枠の中に入れるものだから、

何だか1つ1つが薄っぺらくなってしまった印象です。


役者陣は豪華です。いえ、豪華過ぎます。

これもテーマと同じく、登場人物の描写に時間を割けないものだから、

役者個人の持つ雰囲気や力で…という感じがしました。

そんなことするくらいなら、もっと絞って描けばいい。

原作をそのまま再現するのは無理です。

映像化する段階で、どこを中心に描きたいのか選択すべきだと思いました。


それから、タイトルの
〝半落ち〟とは警察用語で

容疑者が容疑を一部自供するも、完全に自供はしていない状態

のことを言います。

つまり、この作品の場合、空白の2日間の梶の行動ということになるんですが、ミステリー的な要素はほぼ皆無です。

そういう意味では、ミステリーかどうかは微妙なところですね。


僕はこの作品を観て、


〝最愛の人に「殺してくれ」と言われたらどうするだろう〟

〝僕が梶の妻と同じ立場になったら、「殺してくれ」と言うだろうか〟


と考えました。
皆さんも、考えたのではないでしょうか。

僕の結論は、どちらもNOです。

その状況になっていないから言えるだけだ、と思いますか?

確かにそうかもしれない。

でも、「殺してあげる」と言えますか?「殺してくれ」と言えますか?

では、僕らは何のために生きているのでしょうか。

きれいに死ぬ為ですか?死ぬ為に生きていくのですか?


それではあまりにも悲しい。

生きて、生きて、生き抜いた結果「死ぬ」のだと思うんです。

(僕には難しい死生観はわかりませんが…)

僕は生きたい。見苦しい姿になったとしても、生きていたい。

最愛の人にも生きて欲しい。そんなことを考えました。


…というわけで、今回の評価は星2つです。

映画としては、不満が残ります。

でも、命について考える機会を提示している事、

新しい切り口のミステリーだろうという点で、星2つにしました。


最後に、森山直太郎の歌の音量の大きさにビックリして、

慌ててボリュームを絞ったことを付け足しておきます。


半落ち 公式ホームページ