珈琲時光 ★★★★

監督:候孝賢

出演:一青窈、浅野忠信

タイトル: 珈琲時光


ストーリー

フリーライターの陽子(一青窈)は、

生みの母が台湾人で、日本と台湾を行き来している。

高崎で暮らす実の父と義理の母とはいい関係だ。

古書店の二代目、肇(浅野忠信)とは親しく付き合っており、

台湾の音楽家・江文也の資料も探してくれた。

肇は陽子に思いを寄せているが、その気持ちを伝えられない。


ある日陽子は、自分が妊娠していることを高崎の両親に告げる。

相手は台湾の男性で、陽子はひとりで産むつもりだ。


日々は穏やかに過ぎ、陽子は、自分を思う人々の優しさに包まれていた。

goo映画より


レビュー

2003年、小津安二郎の生誕100年を記念して制作された作品。

台湾の候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督が小津監督の愛した「東京」を舞台に、

一青窈演じる陽子や彼女のまわりの人々の想いを描いています。

小津安二郎は、僕の故郷・長野県茅野市にも所縁のある人です。

彼の作品は、中学生の頃「東京物語」は観た気がしますが、

ほとんど記憶がありません。(当時の僕は、まだ若すぎました。)


鬼子母神、神田神保町、御茶ノ水、高円寺…。

候孝賢監督が撮る「東京」には、温度があり、温かさを感じました。

「東京」という街に付きまとうイメージ、大都市とか無機質というものではなく、

〝人が生きている街〟〝日常〟が丁寧に描かれていると思います。

作品の中に出てくる都電や神保町の古本屋街は、僕にとっても生活の場です。

僕が肌で感じる風や空気を、映像の中でも感じることができるんです。

カメラを振ったら、そこに僕がいるような気分になりました。


以前、ソフィア・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション」も見ましたが、

僕は、この「珈琲時光」で描かれる「東京」の方が好きです。

映像自体も好きだし、描かれている人々も…。


一青窈は、映画というか芝居は初めてですが、今までの彼女のイメージと

役の陽子のイメージに共通する部分があるせいか、とても自然に見えます。

僕の抱く一青窈のイメージは〝飾らない・純粋〟なんです。

僕は、そういう女性が好きですね。(まぁ、僕は素の彼女を知らないから、プロダクション側の術中にはまっているのかも…。)

今後、彼女が女優業もやるようなら、注目したいなと思います。

一青窈に関していえば、映画の主題歌「一思案」も彼女が歌っています。

エンディングで流れますが、もう少しうまく使って欲しかったなぁと思いました。

作品にクライマックスや盛り上がりみたいなものがないのだから、

仕方ないとも思いますが。


…というわけで、今回の「珈琲時光」の評価は星4つ

はっきりいって、評価の分かれる作品だと思います。

盛り上がりのある映画が好きな人とかには退屈だと思います。

でも、僕はこの作品好きですね。


『あぁ、東京もいいもんだなぁ』

『散歩にでも行こうかなぁ』


観終わった後、そんな気分になる映画でした。

それと、小津作品もこれを機にもう一度観てみようと思いました。